ハヤシもあるでよ!
昔、ハヤシもあるでよ!というハヤシライスのCFのコピーが流行していたが、世の中にはハヤシもあるということが意外に大事で、野茂がどうなるかと心配していたら大リーグに入って好成績をあげるとか、豆腐を買ってきたらついでに油揚げも入っていたとか、そういう世界の逆沈没、第三の勃発は面白い。インターネットもそういうもので、僕はインターネットを第三のハヤシと呼んでいる。思わぬ所から世界は広がってしまう。
人類の歴史は答えのでない質問のようで、雪だるま式に転がって膨張、拡大していく。ライク・ア・ローリングストーンというのは、歴史のことかと思い知らされる。
コンピューターカルチャーの中心地としてサンフランシスコは有名だが、ハイト・アシュベリ−という場所を知っているだろうか。ヒッピー・カルチャーの発祥地。当時グレイハウンド・バスが観光名所として、ヒッピー見物ツアーをしていた。観光に来たヒッピー見物客に、ヒッピーたちが手をふってこたえた。グレイフル・デッドのジェリー・ガルシアまで、グレイハウンド・バスで見物に来たおばちゃんやおじちゃんに手をふっていたのだから面白い。
さて、そんなシスコ・カルチャーが築き上げたものが、WELLというBBSだ。インターネット上のWELLコミュニティー(http://www.well.com/Community/index.html)は西海岸カルチャーの集積で、その情報量の大きさに驚いてしまう。内容の充実度はホワイトハウスの比ではない。驚くのはWELLコミュニティーの中にピース・ギャザリングなどの西海岸をよく知っている人にしかわからないものまで含まれている情報だ。
連日報道される政治、社会、経済についてのニュースは、世の中はそういうものが中心として存在しているという大きな意識から作られている。でも本当は野球やJリーグほど巨大な観衆を前に行われているものはなくて、ロック・コンサートもローリングストーンズに50万人の人が集まる。インターネットは2000万人以上が日夜自分のホームページを作ったり、ニュースグループに書き込んでいる。WELLはそういうものの代表だ。
そのWELLコミュニティーのなかにサンフランシスコ・テレサーカス(http://www.well.com/user/tcircus/index.html)というホームページがあって、あのレジデンツのページもその中にある。スプ−ンマン、フラットヘッド、バーニング・マン、など子どものような名前ばかりのアーティスト、ミュージシャンのページだが、メイン・ステージと呼ばれるもののほかにサイド・ショウ(http://www.well.com/user/tcircus/Side/index.html)というコーナーがあって、その中にはD'カッコウ(http://www.well.com/user/tcircus/Dcuckoo/index.html)というMIDIミュージックのグループやアンダーワールド・オペラ・カンパニーというオペラのグループ、ブレイン・ボックス・コミックスというアンダーグラウンドな漫画のグループのページが入っている。
D'カッコウは女性6人のミュージシャンのグループでテクノ、ダンス、ワールドミュ−ジック系。MIDIマリンバとMIDIドラムとMIDIバンブ−トリガースティックなどのコンピューター楽器を作っちゃっている。自分たち自身で発明して、デザインして、作ったのだ。オークランド・コロシアムでのステージがアップロードされているが、オークランド・コロシアムは大きい会場でシスコ周辺の東京ドームみたいなものだ。CDはアーティストがダイレクトにサポートする、企業のメカニズムをさけてと紹介されている。すべて郵便で注文できる(問い合わせはdcuckoo@well.sf.ca.us.)。東京ドームぐらい大きい会場に出ているミュージシャンがメジャーの会社を通さずに直接CDを売っていることはけっこうハヤシもあるのだなあと感動するお話だ。
ブレイン・ボックス・コミックス(http://www.well.com/user/tcircus/Brainbox/index.html)はこんな前書きで紹介されている。ブレイン・ボックスは初めてのデジタル・アンダーグラウンド・コミック・ブックで多くの漫画家が利用してほしい。スーパーヒーロー漫画とは違ったアンダーグラウンド・コミックは60年代以来続いている。アーティスト自身が作り、広告主や編集者の検閲なしに表現の自由が許されてきた。こういったやり方は安い作りとなり、たいてい、ゼロックスコピーのホッチキス止めで、流通も規模の小さいものだった。そのため社会的にはこの生のパーソナルメディアは理解されなかった。デジタル化されて、触れる機会のなかった人々に分け与えられることを望む、と。
そう言えばハヤシもあるでよの続きを考えるとグラストンバリーというイギリスのロックコンサートのことで、3日間に50万人以上が毎年集まる。3年前のグリンピース・エイドの時は会場全体が太陽熱発電ですべて運営されていた。50万人分の消費電力を太陽熱発電で3日間おぎなうわけだから、市町村レベルなら太陽熱発電でやっていけることを立証している。日本のメディアでは報道されないので、一種の奇跡のような出来事が意外に眠ってしまっている。奇跡はそこら辺で寝ころんであくびをしていればそれですむのである。
インターネットは国際社会というピラミッドの終りを告げる。権力に対して革命勢力があったとして、その必要がない。本当は必要かもしれないけれど、中心を持たないメディアの発達それ自体で多少すんでしまう。ネット上ではホワイトハウスや官邸よりも個人または小グループの方が魅力的だ。そこがけっこうハヤシで、インターネットもあるでよと大勢が言い始めている。ここがミソなのだ。インターネットに触れた人々の意識は脱ホワイトハウス、脱官邸となってしまう。人々の意識が変わると世の中も変わる。そこに、このインターネットという巨大なメディアの本質がある。マイナーなグループの発足とつながり、情報交換、そして、それがワールドワイドな世界的な空間を包含して存在している。この新しいピラミッドには誰もが参加できるのだ。
さて結論だが、インターネットは今世紀末の大きなハヤシだ。カフェ文化だという話もあるが。とりあえず第三のハヤシが勃発したのだから、奇跡を手にして気楽に行こう。