終わってしまったサイボーガニック
今回紹介するのは90年代の革命なんていわれた連中の話だ。彼らのやったことは60年代のお父さんが考えればそんなに、すごいことじゃないかもしれないけれど、ただ、普通の連中より1センチだけ飛び出ていたのだ。
彼らの名前はサイボーガニック。やったことはサンフランシスコの一角で共同生活を始めたことだ。でも、それだけじゃ本当になにがすごいことだったのかわからない。彼らは共同生活を始めると同時にワイアーを家と家に屋根に登って、つなぎあわせ、隣の家同士電子メールのやり取りができたり、一種のネットワークをつくりあげたのだ。ま、いまでいうイントラネットやLANのようなものだった。ただ、数年前、当時はそんなネットワークを結んでサーバーを置いた共同生活をレイブ好きの若者たちが始めたというのはショッキングなニュースで、まさにカッティング・エッジの若者たちだったのだ。
逆にいうとサイバー・スペースで共同体をつくっていた連中が、実際に共同生活までしていたのだから、驚く人も多かった。90年代の革命なんて呼ばれることになった。
30年前ヒッピーのはやった時代に共同生活は一種の流行だった。コミューンなんて呼ばれて日本でも部族なんていうオールド・ヒッピーたちがやっていたことだ。
ぼくが最初に彼らを訪ねたのは、もう3年前。インターネットが日本でブレイクしかかっていた時期だった。当時の彼らのメンバーは20数人ぐらい。毎週、木曜にTNDというサーズ・デイ・ディナーという誰もが電子メールで申し込めば参加できるオープン・パーティーを開いていた。場所はサイボーガニックの事務所でボスのジョナサン・スチュアーなど当時4人が住んでいた。サイボーガニックが始まった場所だった。隣の家にはもう二人住んでいて、向かいの家にも数人住んでいて、事務所のあるラモナ・アベニューには20人以上が住んでいた。ラモナのはずれに住んでいる連中の家まで彼らはケーブルを屋根に登って自前ではりめぐらせていたのだ。
このオープン・パーティーも一つの話題になった。誰が来てもいいのだ。サンフランシスコの著名人はやってくるし、全米から世界中から若者たちがやってきた。ホームページのパーティーの様子をのぞいて興味を持った連中から、ローリング・ストーン誌、テレビ局などなど。
彼らは日本でもインターネットの商用サービス開始とともに話題になったセーファー・セックス・ページ、安全なセックスのためのページをつくったり、いろんな話題にことかかないホームページをつくり、ネット上でもかなり知られる存在でもあった。
ボスのジョナサン・スチュアーはモーリー・ロバートソンのハーバード時代の同級生で、ホット・ワイアードやC-NETという日本でもおなじみのテレビ番組のホームページの立ち上げに関わった30代の若者。
彼の考え方はサイバー・スペースとリアル・スペースを結ぶこと。それはずっと彼の理想で、リアル・スペースでの人と人の出会いをつくっいくことに彼ほどこだわっている人間はいない。
彼らの世代は様々で、元祖サイケデリック・バンド、グレイトフル・デッドの死んだギタリスト、ジェリー・ガルシアのバンドにいたミュージシャンもいれば、若い連中はみんなテクノ・ファンでレイブ好きだ。女性のボスだったジェニー・クールに話を聞いたとき、サイボーガニックが始まった時期は、もっとレイブ、レイブした共同生活だったそうだ。朝方まで続くレイブから帰って朝食を食べると、いつのまにか誰かが事務所で働きだすという、生活だったようだ。
最後に彼女のサイボーガニックに対する考え方を紹介しておこう。
「共同体として考えれば、弱いものかもしれない、でも、病気になったときにそばにいてくれる友人たちはいつもいる」。
だが、やがてサイボーガニックは会社となり、後半はTNDが開かれることもなく、経営に失敗して終わっていってしまった。すごく残念。
日本でもこういうことを実際、やってみようとする人たちはいるだろうか。
Cyborganic Gardens
サイボーガニックのネット上のメンバーのホームページがたくさんあって、中にはハワード・ラインゴールドのページやリンクス・フロム・ディ・アンダーグラウンドのジャスティン・ホールのページまである。よく探していくとその二人のほかにもネット上で話題になっているものがたくさんあるはず。
Text Indexから入って、Links from the UndergroundやBrainstormsを見ていこう。日本でも雑誌などで話題となったジャスティン・ホールやハワード・ラインゴールドのページだ。特にLinks from the Undergroundは大学生のページが1日2万ヒットあるという、インターネットは個人の情報発信のツールで、さらにアンダーグラウンドでクールなものだというイメージをつくりあげた元祖のページだ。
NET CHICK Clubhouse
http://www.cyborganic.com/people/carla/
日本でもインターネットは女性のためのツールという、インターネット上のヒップな女性ばかりを集めた「ネット・チック」という翻訳書がでたカーラ・シンクレアのページ。彼女もサイボーガニックのメンバーの一人。内容は洒落ていてかわいい。全部見てもすぐに終わるぐらいのページなのでサイバー・スペース上の女性らしい感性をカンタンに味わえる。
MapをクリックしてMagic 8 BraとPaper Dollを見てみよう。女性的なやわらかい感性のゲームになっているので楽しい。表紙ページからダンナさんのマーク・フロウエンフェルダーのつくるE-ZINE、bOING
bOINGにリンクがあるのでbOING bOINGを見落とさないこと。洒落のきついパンク・ユーモアが味わえるはず。